労働者災害補償保険(労災保険)は、業務災害・通勤災害といった労災事故が発生した場合に、保険給付により従業員を負傷・病気などから保護します。
医療保険(原則本人負担なし)としての役割だけでなく、障害・死亡といった場合を含めて年金保険(従業員・遺族に対しての補償年金・一時金)としての役割もあわせ持っています。
労災保険未加入の状態で労災事故が発生した場合でも、従業員は労災保険によって保護されます。しかし保険給付に必要な費用が事業主に対して徴収され(事業主の過失度合により負担割合は変動し、最大全額負担)、さらに2年前まで遡って保険料が徴収されるため(追徴金を加算)、事業の存続自体にかかわることもあります。
労災保険は、従業員とその家族だけでなく、事業主も守る保険です。
未加入の方や、従業員を雇用する予定の方は、ぜひご相談ください。
正社員だけでなく、派遣・パート・アルバイトなどを含めて、1人でも従業員を雇用した事業主は、法人・個人を問わず労働保険への加入は義務となります(強制適用)。
ただし、個人経営の小規模農林水産業は、労働保険への加入は任意となります(任意適用)。
強制適用の場合、届出事実が発生してから10日以内に、管轄の労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)に「保険関係成立届」を 届け出る必要があります。また「適用事業報告」も労働基準監督署に遅滞なく提出します。あわせて「概算保険料申告書」により、概算保険料を申告・納付する必要があります。
また、雇用保険の適用事業になった場合、「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」などの届け出も必要となります。
労災保険 | 雇用保険 | |
強制適用 | 従業員を雇用 | 強制適用対象(*1)の従業員を雇用 |
任意適用 | 常時5人未満(*2)の従業員を雇用する個人経営の農林水産業 | |
届出先 | 労働基準監督署 | 公共職業安定所(ハローワーク) |
保険適用 届出書類 |
保険関係成立届 概算保険料申告書(*3) 雇用保険適用事業所設置届(*4) |
|
被保険者 届出書類 |
届出書類なし(被保険者の概念なし) |
雇用保険被保険者資格取得届 |
(*1) 1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上引き続いて雇用される見込みのある労働者
(*2) 林業の場合、常時雇用の労働者が1人でもいる場合は労災保険は強制適用
(*3) 届出先は労働基準監督署または都道府県労働局
(*4) 届出先は公共職業安定所(ハローワーク)
労働保険の保険料は、その年度(4月1日から翌年3月31日まで)における申告の際に概算で申告・納付し、翌年度の申告の際に確定申告の上、清算します。この前年度の確定保険料と当年度の概算保険料をあわせて申告・納付する手続きが「年度更新」です。
保険料は年度内に従業員に支払われる賃金の総額に、事業の種類ごとに定められた保険料率を乗じて計算します。手続期間は6月1日から7月10日までと定められております。
1年に一度の手続きに、手引書を見ながら頭を悩ませたり、前年度の担当者が退職してしまって困っておられる事業主の方も多いのではないでしょうか。
建設現場での負傷などの業務災害、通勤途中での転倒による通勤災害など、「労災が使える」とはよくいいますが、実際に事故が起きてしまうとどのような手続をしていいのか分からない事業主の方も多いのではないでしょうか。
労災指定病院と指定病院以外では手続が異なりますし、治療途中で自宅近くの病院に変更する場合なども手続が必要になります(療養補償給付)。また、就労できない場合に、療養中の生活保障として支給される「休業補償給付」の手続も必要になってきます。
「従業員に『育児休業をしたい!』と言われてしまって・・・」なんて悩んでいませんか?
従業員の入退社の手続も面倒なものですが、さらには育児・介護関連の給付金など、もらえるのに手続がよく分からなくて、あきらめていませんか?
育児・介護の休業期間中、雇用保険から「育児休業給付金」「介護休業給付金」が支給されます。また、育児休業時は社会保険料が免除になりますので、社会保険の手続と同時に進めれば、事業主・従業員ともにWin-Winの関係を築くことができます。
育児休業給付金 | 介護休業給付金 | |
受給期間(原則) | 1歳まで(*1) | 最長3か月間(*2) |
給付金額 (1日あたり原則) |
賃金日額の67%(~180日)(*3) 賃金日額の50%(181日~) |
賃金日額(*4)の67%(*5) |
社会保険料 | 免除(*6) | 免除なし |
(*1) 保育所などに入れない場合は、例外的に最長2歳まで延長可能(平成29年10月の改正法施行により1歳6か月時点で再延長可能。改正前は1歳6か月まで延長可能)
(*2) 対象家族1人につき要介護状態(負傷・疾病・身体障害・精神障害など)ごとに3回(平成29年1月の改正法施行により介護休業の分割取得が可能)までの分割受給が可能(同一対象家族で複数回受給の場合は、同一対象家族についての異なる要介護状態での受給を含めて、通算93日まで受給可能)
(*3) 平成26年4月より改正法施行(改正前は50%)
(*4) 原則過去6か月間の賃金総額の1/180(雇用保険法での1日あたりの賃金額)
(*5) 平成28年8月より改正法施行(改正前は40%)
(*6) 事業主負担分および従業員負担分ともに免除